ほとんどの自毛植毛はFUTがベースとなっています。
アメリカでは7割、欧州では5割、ブラジルではなんと9割ものシェアを占めるFUTですが、日本ではここ最近FUEという技術が急速に普及し始め、FUTとFUEの割合は5対5(※)のイーブンです。
1) PEPARS N0.99 美容外科・抗加齢医療-基本から最先端まで- 全日本病院出版会 P101
2) Ruston, A.:Temporal recession: why, when and how to convince patients. 15th International congress of Italian Society of Hair Restoration. Syracuse, Italy 26-29 June, 2014
FUE植毛とは何か?どうしてそんなに人気が出始めたのか?
植毛歴約20年になるカールが猿でもわかるように解説し、そのメリットとデメリットを徹底解剖してみます^^
※ 内容をスムーズに理解するため、まずはFUT植毛を理解してから読まれるようにしてくださいね。
自毛植毛のFUEとは?
FUEとは、Follicular(毛包)Unit(ユニット)Extraction(抽出)の略称で、基本概念はFUT植毛と同じです。(※ FIT、つまりFollicular(毛包)Isolation(分離)Technics(テクニック)と呼ぶ植毛医もいます。)
いずれにしても、頭皮ドナーから毛包ごとに採取を行い薄毛の場所に移植をするというわけです。
FUEも毛包単位で移植をする
なので、理論的にはFUEはFUT法の中の一つの手段と言うこともできます。
ただ、基礎理念は同じでも、実際に行う行程はFUTよりも直接的で、異なる方法を採用しています。
FUEによる自毛植毛の流れ
まず、移植する髪を採取するわけですが、採取場所はFUEも基本的にFUTと変わりません。
ドナー・ドミナントの法則に基づいて、男性ホルモンの影響を受けない生涯生え続ける可能性が高い毛根だけを側頭部と後頭部から調達します。
薄毛にならないエリアから移植毛を調達する
そのために、採取場所を刈り上げます。
出典:湘南AGAクリニックFUE施術前の刈り上げ例
ちなみに、刈り上げる範囲は、採取する株(グラフト)の数によって変わってきます。
写真の例ですと、1000株(約2000本)以下の場合の状況です。
もし、1000株以上の大量の移植毛が必要になってくるケースでは、スキンヘッドにして広範囲から採取しなくてはいけなくなることもあります。(※ 厳密に言えば、一部の狭い範囲からも大量の移植毛を調達できるんですが、致命的なデメリットがあるのでそれは後述します。)
出典:ヨコ美クリニック
それで、通常は移植毛の必要数に応じて変わり、以上のような狭いパターンになる時もあります。
FUEで刈り上げる幾つかのパターン
(※ ちなみに、近年では刈り上げなくても済むノンシェーブンFUEも行えるようになっていますが、頭皮の条件や費用面での兼ね合いで希望者全員が受けられるとは限りません。)
刈り上げてドナー部分の準備ができましたら、約1ミリ前後の専用パンチを使い頭皮の4,5ミリの深さまでをくり抜き、毛包(髪を成す1セット)ごと引っ張り出して移植毛を採取します。
この採取の仕方がFUTと一番異なる部分で、一つ一つの株を細かく取り出していかなければなりませんから、医師・看護師たちのきめ細かい作業が求められることになります。
FUEでは1株ごとくり抜いていく
採取された移植毛は一時的に適温調整された食塩水や培養液に浸して保存され、その間に移植毛を植え付ける箇所に極細の刃、もしくは専用チューブパンチなどを使いスリット(切込み)或いはホール(穴)を空けて新しい毛穴を作ります。(※ クリニックにより異なる。)
新しい毛穴をすべて作り終えたら、移植毛を植え付けていきますが、植え付け方は基本FUTの場合と変わりません。(※ クリニックによっては機械を使い空気圧で植えるケースも。)
仕上がり具合はFUTの場合と変わらず自然で、以下の写真のような変化を誰でも期待することができます。
治療方法:アイランドタワークリニックによるFUE植毛(アイダイレクト)。
施術の説明:後頭部から毛包ドナーを採取して生え際に2200株を移植。
施術の副作用(リスク):一時的な痛み、赤み、熱感、抜け毛、くせ毛、つっぱり感、感覚の鈍さ、膨隆、腫脹、瘢痕等が生じる可能性。
施術の価格:284万円(税抜)
※ 治療効果は人それぞれで異なります。あなた自身の植毛結果が他の症例と同じになることはありませんのでご注意ください。
以上が大まかな流れになりますが、FUEによる最大の特徴は後頭部からの移植毛採取の仕方にあります。
FUTは帯状の毛根付ドナーを採取した後に株分けをして細かくしてから移植毛になるのに対し、FUEは直接的に1株・1株くり抜いて移植毛を調達するわけです。
そう考えますと、植毛を受ける側としてはFUEの方がFUTよりもスマートな方法だと感じ、より好感を持つ方が多いようです。
では、次にFUEのメリット・デメリットを取り上げていきましょう^^
メリット:移植毛が少ない場合、後頭部にできる傷が目立ちにくい
FUTの場合では、移植毛の数が2000株以上、或いは500株以下の少量の時であろうと必ずメスを入れてドナーを採取しますので、最終的には後頭部に幅が3ミリ以下の線傷ができます。(※ 9割以上が3ミリ以下の細い傷でおさまりますが、体質によって結果は変わります。)
出典:ヨコ美クリニックFUTでは幅3ミリ以下に線傷が残る
一方、500株以下の少ない自毛植毛の場合にFUEの手段を選ぶと、結果的に後頭部に残る傷は見た目ではほとんど気にならなくなるほどわからなくなります。
限られた後頭部・側頭部の中からの採取でもランダムにくり抜いていけますから、最終的に残る傷跡はボケて見え自然に映ります。
出典:ヨコ美クリニック
上の写真の例では、手術後約1ヶ月経過した後の状態ですが、くり抜いた形跡がほとんどわからないくらいの自然な仕上がりだと思います。
このように、500株以下(1000本以下)といった比較的少数の採取で済むような植毛の場合、つまりプチ植毛の際にFUEを選ぶと、後頭部の状態も生え際同様にナチュラルに仕上げられるというメリットがあります^^
デメリット1:移植毛が多い場合は残る傷が逆に目立ちやすくなる
今しがた、FUEのメリットとして後頭部にできる傷が目立ちにくいことを取り上げました。
…が、それは数百株(グラフト)といった移植する髪が少ない場合に限った条件付きです。
逆に、何千株という移植毛が必要になった際にFUEを選ぶとどうなってしまうかと言うと、くり抜いた跡が無数にできて、見た目がかなり無残な状態に・・・
例えば、仮に、無理にでも後頭部の限られたスペースから大量の移植株をくりぬいてしまうと以下のようになります。
出典:ヨコ美クリニック
少しびっくりされたかもしれませんが、上の写真は日本の患者さんが1500株程度採取したらスカスカになってしまった1例です。(※ 採取するパンチの口径サイズや本人の後頭部の密度によっても変わります。)
『本当にかわいそう…』の一言ですよね(*_*)
デメリット2:多くの移植毛が取れない
1つ目のデメリットと繋がってくるんですが、もしかしたら後頭部・側頭部に限定せず頭全体の広範囲から満遍なく採取するなら、先ほどの弱点はカバーできるんじゃないの?と、思われた方もおられるかもしれませんね。
もちろん、傷跡のことだけを考えれば、そうなのかもしれません。
頭全体から移植株を採取するならくり抜く場所をもっとランダムにできますから、傷痕を目立たなくすることはできるでしょう。
ですが、もし後頭部と側頭部以外の箇所の髪を移植毛として植え付けるなら、その髪が生涯生え続けるかは保障できません。
これは致命的です。
もし手術が成功しても、移植した髪が10年後に成長をやめてしまったら悔やまれますもんね?
出典:ヨコ美クリニック
以上の画像で指摘されてるとおり、男性ホルモンの影響を受けずに生涯髪が生え続ける安全なドナーエリアは、後頭部左右の耳介(じかい)上縁を結んだラインより下側の6~8cm、側頭部は耳介の上側6~8cmだと証明されています。
1) 【毛髪】ガイドライン2017を踏まえた治療UPDATE (編著 武田啓) 克誠堂出版 P56
なので、あくまでも安全で正しい植毛をしたいなら、この範囲からのみ移植毛を採取するのが絶対条件となるわけですね。
そうすると、一つ目のデメリットである「本数が増えれば傷が目立ちやすくなる」という観点から、FUEではどうしても後頭部・側頭部での移植株採取が限られてしまうのです。
(ちなみに、FUTでは1000株であろうと3000株であろうと採取部分は縫い合わせて結合する結果、傷跡面積はほぼ一定で変わらないため、傷痕を気にして株の採取数を調整する必要はありません。)
そう考えると、FUEの場合『メガセッションと言われる2500株以上の植毛を必要とする人』は不向きになる可能性が高くなります。
とても大切なことだと思うので、一つこの点を踏まえて警告させてください。
某有名クリニックなどのHPサイトでは、こういう事実を故意に無視するような宣伝文句が見られます。
うちのクリニックではFUEで1時間に最高2000株も採取できます!
とても聞こえの良いセリフですので、何かスゲ~ぞココ!(゚Д゚;)!ってなるかもしれませんが…賢いあなたなら、これが実際には何を意味するかを今なら悟れると思います。
採取技術がいくら素晴らしくても、そうすることにはリスクが伴うということです。
先ほど考察したように、移植本数が多くなり安全ではない箇所を超えて採取すれば、植毛しても将来その毛は抜けてしまう恐れがあり、逆に安全な場所に限定しながら大量に移植株を採取するとなると、傷がFUTよりも目立ってしまい本末転倒に陥ってしまう。。。このリスクです。
…ちなみに、FUEで5000株を採取すると、あなたの頭にも以下のような結果が待っているかもしれません。
たとえこの半分の量だとしても、見た目がきつくなるのは明らかなはずですので、狭い範囲から大量の株(グラフト)を採取するFUEは極力慎重に検討しなくてはいけません。
たとえ広範囲からであっても、FUEで大量の採取を行うと既存毛では隠しきれず、地肌が透けて見えるようになるリスクも付きまといます。
もしそういう4〜5000株という大量のFUE植毛を実施しているクリニックがあったら、複数回に渡る症例写真を見せてもらって、その人の後頭部と残っている脱毛状況を確認するのは必須です。
そうするなら、誤って ヤッちゃう ことを避けられるでしょう。
ただし、基本的に植毛専門クリニックは後頭部がスカスカにならない範囲内で採取可能な本数の目安を事前に教えてくれますので、自分の場合には何本くらい植毛できるのか気になるなら一度カウンセリングに行って聞いておくと今後のプランを立てやすくなりますよ^^
特にFUTとFUEの両方を行っているクリニックならFUTとFUEをどのように組み合わせていけば植毛の総数を最大限にできるかなどの相談にも乗ってくれるためとても便利です^^
デメリット3:毛根切断のリスクが高い
FUTの場合では、顕微鏡を使って肉眼で毛根を確認しながら株分けをしますが、FUEでは手術の性質上、目では見えない部分の作業が含まれます。
移植株を毛包ごと専用パンチでくり抜くわけですが、毛根は皮膚の下で曲がっていたりする場合もあるので、目では見えない状況で皮膚の表面から毛根全体を傷つけずにそっくり取り出すのは高度なテクニックが必要です。
頭皮下にある毛根の流れは見えない
そのため、どんなに熟練した職人でも「6%前後の毛根切断がおこる」と最新の論文で報告されています。
毛根切断率は電動パンチの場合で1.7〜15%(平均6.14%)、アルタスロボットで0.4〜32.1%(平均6.6%)と言われ、前述した刈らないノンシェーブンFUEでは更に毛根切断を起こしやすいことがわかっています。ちなみにFUTの平均は1.25%(※)です。
1) Avram MR, Watkins SA: Robotic follicular unit extraction in hair transplantation. Dermatol Surg 40: 1319-1327, 2014
2) Tan TY, Pathomvanich D, Castillejos DK, et al: Follicular transection rate in FUT in Asian: 15 years later. Hair Transplant Forum International 27:1-7,2017
3) Harris J: New methodology and instrumentation for follicular unit extraction: lower follicle transection rates and expanded patient candidacy. Dermatol Surg 32: 56-62, 2006
FUEはFUTよりも毛根切断を起こす確率が高い
植毛をして生え際がもっと濃くなり見た目がよくなるのは本当に嬉しいことですが、かたや移植毛候補の6%を失い、結果的に自分の髪の総数が減ってしまうというのは何とも歯がゆい話ではないでしょうか(;´∀`)
まとめ
包丁は料理など用途に合わせてちゃんと使うなら有用な道具となりますが、いったん使い方を誤るなら殺人兵器にもなりかねません。
それと同じで、FUE植毛もそれに見合った用途で使うなら最高水準の薄毛治療となりますし、使い方を誤れば『致命傷』を残してしまいます。
具体的にFUEが向いている正しいケースとしては、
- M字修正など、狭い範囲の薄毛箇所に植毛をする場合
- 頭皮が硬かったりしてFUTでの帯状ドナー採取が無理な場合
- FUTでできる一本線の傷よりも、FUEでできる白い斑点の傷痕が良いと思う場合
- 胸毛やスネ毛など頭部以外の体毛からしかドナー採取ができない場合(※体毛が生涯生え続けるかどうかの保障はない)
以上のようなケースが当てはまる場合には、FUEを積極的に採用することができます◎
実は今回、カールがこの記事をまとめていて感じたことの一つが、植毛ルーキーの方たちは『FUEに対してバランスの取れた見方を持つことは簡単ではないかもしれない』という懸念です。
というのは、費用がFUTよりも割高になるにも関わらずFUEを選ぶ人が多いのは、そのメリットがあまりにも強調されすぎているからだと思うんです。
- FUTと違ってメスを使わないからFUEは傷口が目立ちません!
- たった1回の手術で5000株も移植可能!
FUEが さも何の欠点がないかのような印象を植え付けようとする広告が多すぎます( ;∀;)
これは、どんなに少なく見積もってもバランスの欠いた情報としか言わざるを得ません。
先にも取り上げましたように、 FUEでも実際に傷は残りますし、移植株の数量によっては既存毛では隠せないほどです。
一回の手術で1000~1500株以上を超える場合は、生涯生え続けるとは限らない安全な箇所を超えての採取になる可能性があり、安全な後頭部と側頭部からのみ大量のドナーを無理に採取すれば余計に傷が目立つことになります。
そのため、くれぐれもセンセーショナルでオシャレな広告に踊らされないようにして、自分が期待していることが本当にFUEで可能であり、また達成されることを実際に確認したうえで行うことがとても大切です^^
一度、FUTとFUEどちらの術式でも植毛を行っているクリニックへカウンセリングに行ってみると、本当の意味でバランスの取れた見方が持てるようになり、更に賢明な判断ができるようになりますよ^^
追記:カールさんはどこの病院を利用されたんですか?という問い合わせが多くなってきたので、カール本人の症例もご紹介しておきますね。
↑M字ハゲ時代↑
治療内容 | FUT法で生え際付近に2250株の自毛植毛を実施。 |
費用 | 3回合計150万円(税抜) |
主な副作用・リスク等 | 一時的な痛み、赤み、熱感、抜け毛、くせ毛、つっぱり感、感覚の鈍さ、膨隆、腫脹、瘢痕等が生じる可能性。 |
注意点 | 植毛の結果は人それぞれで異なります。あなた自身の施術が他の症例と同じになることはありませんのでご注意ください。 |
↓自毛植毛した現在↓
施術から18年経過
現在もフサフサのまま^^
僕はヨコ美クリニックで植毛施術を受け、前髪を理想の状態にしてから、AGAの部位は育毛剤や発毛薬で守ってきました◎
なので、あなたも自分にふさわしい方法を見つけて取り組むなら、今の悩みを確実に解決していけるはずですよ。
カールはあなたの治療計画を本気で応援しています^^
こちらのページではヨコ美クリニックの気になる植毛施術の特徴・症例・費用等をどこよりもわかりやすく掲載いたします …
【植毛クリニック一覧表】
※ 費用欄は1000株移植したときの料金です。
※ 最終確認はご自身でお願い致します。
※ 無料カウンセリングは一覧表の「公式HP」から簡単に申し込みができます。
※ サイトの情報を利用し判断・行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。